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都道府県におけるLinkDataを活用したミニマムオープンデータ推進戦略

License : CC0
Update: Jul 6, 2014

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(執筆途中です)
Update: Jun 28, 2014 (遠藤守)
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【はじめに】 2014年度に入り,国内におけるオープンデータ推進の取り組みはますます活発化してきている. 日本政府によるオープンデータ推進戦略によって,総務省が公開する電子政府の総合窓口「e-Gov」など,トップダウン型のオープンデータ推進の仕組みが試行されている.一方,地方公共団体のオープンデータ推進は手探り状態で,各自治体を包括する都道府県に至ってはさらに見通しがつきづらい状況にあり,足並みが揃うにはまだしばらく時間が掛かると思われる. 筆者らはこれまで,個別の市町村のオープンデータ推進について技術的・社会的側面から研究活動を行ってきた[1][2].このため市町村におけるオープンデータ推進のノウハウは蓄積されてきているが,一方でより広域的な公共団体や政令市などでのノウハウの蓄積は十分でない. そこで本研究では,現状の市町村によるオープンデータの推進を更に加速・発展させてゆく上で,これらの市町村を包括的にまとめる都道府県のオープンデータ推進の役割について検討・提案を行うことを目的とする.具体的には,都道府県と市町村のオープンデータ推進の状況を整理し,都道府県が抱える課題やオープンデータ普及の手掛かりになる技術的・社会的動向について考察を行う.その上で実際に都道府県がとり得るオープンデータ推進を,長野県須坂市を中心とした広域地域における試行として実施する.本試行においては,市町村のオープンデータ推進を支援し,都道府県ならではのオープンデータ推進の役割を果たすことが可能なカタログサイト試行版の構築や, LinkDataなどのオープンデータプラットフォームの効果的な活用手法についても検証する.
Update: Jul 6, 2014 (遠藤守)
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【国内におけるオープンデータ推進の状況】 (1) 長野県須坂市の事例 2014年7月1日現在,オープンデータ推進都市は7都道府県31市町村に及ぶ.中でも筆者が推進を進める長野県須坂市は2014年2月22日にOKFN[3]が呼びかけ,開催された「インターナショナルオープンデータデイ2014 in 須坂」(以下,「オープンデータデイin須坂」)をきっかけに,有志によるオープンデータ推進がスタートされた(図1).なお本イベントは長野県内では須坂市のほかに上田市でも同時に開催され,いずれも長野県初のオープンデータデイへの参加地域となった. 本イベントの開催に先立ち,筆者らはSNSサイトであるFacebookにて「須坂市の情報化を考える会」を発足し,facebookやtwitter,google sitesなどのツール環境を整えた.「オープンデータデイin須坂」では,須坂市役所が公開するホームページからオープンデータとして活用可能な情報を検討するアイデアソンや,街歩きイベントを通じた時刻表アプリ活用などを実施した.本イベントの成果を受け,同年3月に本イベントの成果報告の形で提案書を作成し,須坂市長に提出した.これにより須坂市は2014年4月1日に須坂市オープンデータ推進会議を設置するに至った.また翌5月1日には,長野県内では初となる,須坂市オープンデータサイトの公開を行い,国内34番目のオープンデータ推進都市となった.「須坂市の情報化を考える会」はその後も全国的に活用が広まるオープンデータ・アプリ(「5374.jp」[4]や「税金はどこへ行った?」[5])を活用,もしくは活用を検討するなど,精力的にオープンデータ推進を行っている状況である. また,「オープンデータデイin須坂」を実施した際に,総務省信越総合通信局からの提案で長野県・新潟県におけるオープンデータ推進の普及を検討する,「地域オープンデータ推進会議」の設置が呼びかけられ,2014年3月末に事前会合を,同年5月2日には第1回地域オープンデータ推進会議が開催された. (2) オープンデータプラットフォームの状況 ・LinkData LinkData[6](図2)は,もともと生命科学分野における膨大な情報を,RDFを含む様々なデータ形式に変換し利活用するプラットフォームとして開発された.その後,行政が推進するオープンデータの登録・利活用プラットフォームとして一般向けの改良が施された.現在はオープンデータの登録・閲覧と公開を支援するLinkData.orgのほかに,登録されたオープンデータを用いたアプリケーション開発支援をするApp-LinkData,オープンデータを活用・推進するアイデアの登録・閲覧と公開を支援するIdea-LinkData,さらに登録されたオープンデータに付けられた市町村タグからオープンデータを推進する市町村ランキングを公開するCityData[7]など,現在までに合計4つのサービスの提供に至っている.とくにCityDataはLinkDataに登録された市町村ごとのオープンデータの評価指標を累計しランキング表示する.LinkData自体は誰でもユーザ登録ができるため,市町村が公式にオープンデータ推進宣言をしていなくても,実質的なオープンデータの取り組み状況を可視化可能な点で他のサービスにない優位性を有する. ・CKAN CKANはWebベースのデータ管理システムであり,データの公開,共有,発見,使用を合理化することでデータへのアクセスを可能とするコンテンツ・マネジメント・システム(CMS)の一種である.本システムは柔軟にカスタマイズができる一方で,その構築にはUnixシステムの構築・維持管理の知識が必須である.このため,専門知識を持たない人間が導入することは容易ではない.また,本システムはオープンソースであり,導入者が個別にシステムに対してチューニングを行っているため,国内だけでも相当数の亜種が存在しているとされる. (3) 都道府県のオープンデータ推進の状況と課題 日本国内における都道府県のオープンデータ推進の状況をみると,概ね下記の3パターンに属すると思われる. ・市町村同様の情報公開   岐阜県,愛知県,福井県など ・独自サーバによるカタログサイトの整備   ・静岡県,鳥取県,徳島県など ・独自コンテンツのオープンデータ化   ・青森県など  (※2014.7.5調べ) 以上のように,オープンデータ推進都市の中でも都道府県の参加は7自治体しかなく,またその推進手法はまちまちである. その上で,都道府県がオープンデータを推進する上での現状の課題を挙げると,主に以下の4点が挙げられる. ・包括する市町村によってオープンデータ推進の状況が異なるため,一元的に取り扱うことができない ・政府からの経済的支援が望めず,オープンデータ推進による明確なメリットを感じることができずにいる ・独自システムによるカタログサイトの構築を進めようにも成功事例がないため手を出しにくい ・既に情報公開用データベースを構築・運用している都道府県にとっては,システム移行や維持管理費用の面で問題を抱えていることが多い
Update: Jul 6, 2014 (遠藤守)
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【都道府県におけるオープンデータ推進を支援する方策】  このような状況にあって,広域的地方公共団体である都道府県がオープンデータを推進する上で果たすべき役割を下記に提案する. (1) 包括する自治体のオープンデータ推進状況把握のためのネットワーキング構築 現状において,都道府県によるオープンデータの推進は前述したようにいくつかのパターンで進められているが,都道府県におけるもっとも重要な役割は,全庁的なオープンデータ推進を目標とした政策の実施であると考えられる.これはすなわち包括する自治体のオープンデータ推進状況を正確に把握することがまずもって重要であると思われる. (2) オープンデータ特区などの設立支援など,試行的プロジェクトのサポート 日本国内における市町村のオープンデータ推進の取り組みは,まだまだ発展途上であり,都道府県においても同様の状況である.このため,都道府県が取り組むべき最初の支援は以下の2点が考えられる. ・既にオープンデータ推進自治体が存在する場合には,その推進都市を中心とした近隣自治体による組織的連携の仕組み作りを支援する ・オープンデータ推進自治体が無い場合には,まず1つめの推進都市を作るべく,産官学民の連携により集中的な支援を行う (3) 独自でオープンデータを推進できない自治体に対するセーフティネットの構築 都道府県が果たすべき役割の重要な点の一つに,包括する自治体の中で自力でオープンデータを推進できない小規模自治体に対する支援がある.これらの自治体に対しては,近隣自治体の支援や地域のコミュニティなどの協力による手段を以てしてもなお,オープンデータを推進することが困難であるため,最終的には都道府県が支援の手を差し伸べる必要がある.具体的な支援の方法としては,その地域のオープンデータ作成の支援を行える体制作りの一環として,データクリエータ等を短期間で派遣するなどして,LinkData等のオープンデータプラットフォームを活用し,当該市町村のオープンデータ作成を支援する. (4) オープンデータ推進宣言の簡素化  個々の自治体が公にオープンデータ推進を実施しているかどうかは,各々の自治体のホームページ上で「オープンデータ推進宣言」をするかどうかで判断されているのが現状である.この「オープンデータ推進宣言」をしにくくしている要因を,以下に3つ挙げる. ・オープンデータ推進宣言を行うページを新たに作成する必要があるが,その文章例が統一されていない ・公開情報に付与するライセンス(CCなど)の意味を十分に正しく理解できていない可能性がある ・宣言する以上,自治体が保有する情報を一定規模数公開する必要がある,と思ってしまう したがって,都道府県が包括する市町村のオープンデータ推進を支援する際に,上記3点を簡素化する仕組みの提供が有効であると考える. (5) オープンデータプラットフォーム等の積極的活用 (4)にも関連するが,オープンデータ推進宣言の後,2章(3)でも述べたように,各都道府県はオープンデータを公開するためのページまたはサイトを構築すると思われる.一般に従来のホームページ上にページを追加しオープンデータを公開する際には,公開データへのアクセスは通常のWebページへのアクセスに上積みされ,アクセス障害などを引き起こす可能性がある.一方独自のカタログサイトではこのようなリスクは分散されるが,独自にシステムを構築するための予算や維持管理の体制を整える必要がある.このため,2章(2)で述べたような外部のオープンデータプラットフォームなどを活用することが望ましいと考える.
Update: Jul 6, 2014 (遠藤守)
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【カタログサイト試行版の構築と考察】 (1) カタログサイト試行版の構築 4章での議論をもとに,筆者らは都道府県や複数の自治体からなる広域地域において,最小コストでオープンデータ推進を実現するカタログサイト試行版を考案し実装した(図3). 本サイトの直接的な目標としては,長野県もしくは信越地域(長野県・新潟県)が実際に包括する各自治体のオープンデータを推進することを想定した.さらにまずは小規模な実験から始めることとし,試験的にオープンデータ特区,ここでは長野県須坂市を中心とする,近隣4自治体(長野市,千曲市,中野市,小布施町)からなる「千曲川オープンデータバレー」構想を立ち上げ,カタログサイトの構築および運用を実施することである.実際の運用は都道府県や本構想においては中心地区となる須坂市による構築・運用を想定しているが,今回の試験では筆者らが試行的に実施する. 以下,試行版サイトの特徴について述べる. 特徴の1点目は,各市町村のホームページ上でオープンデータ推進宣言アイコンを設置し(図4),リンクアドレス中に各市町村に予め付与した識別可能な番号を含ませておく.各市町村に掲載された本アイコンをクリックすることで,本試行版サイトのページにジャンプする.1市町村1ページで構成される本サイトでは,呼び出される情報を各市町村にカスタマイズした形で表示することが可能である.以上により,市町村はアイコンを設置するのみで利用者をカタログサイトに誘導することが可能となる.なお市町村を一意に識別する番号の付与の際には呼び出し側でのURL表記を簡便化するために,「パーマリンク」(疑似固定URL表記)を実現するカスタマイズをCMSに施した. 2点目は都道府県が提供するカタログサイトはあくまで実データのポインタのみを含めたページを提供し,実データの蓄積場所はLinkDataなどの外部オープンデータプラットフォームを最大限利活用できるように設計した.これにより,都道府県側では集約された各市町村のオープンデータのリンクページのみを維持すればよい.この時,対象の自治体が自力でオープンデータを維持管理できるようであれば,外部プラットフォームの利用方法を案内し,また自力で維持できない自治体に対してはより手厚い支援によるサポートが実施できると思われる. なお,本試行サイトの構築にあたり活用したサーバの仕様およびソフトウェアは以下の通りである.  ・CPU: AMD A4-3300(2Core 2.5GHz)  ・RAM: 8GB-DDR3-1600  ・HDD: 1TB(7200rpm)  ・OS : CentOS 6.5  ・CMS: WordPress 3.9.1-ja  また,カタログサイト試行版におけるオープンデータの実データ置き場には主にLinkDataを活用した.「千曲川オープンデータバレー」も含まれる本試行サイトの構築は未だ未完成ではあるものの,現段階でLinkData上に登録された関連するオープンデータの総計は24データセットであった. (2) 考察 カタログサイト試行版の構築にあたり,簡便なWebサイト構築を可能とするCMSの導入を実施した.このため,サイト構築にかかる手間が省け,コンテンツ作成に多くの時間をかけることが可能となった. CMS活用の利点が活かされ,結果的に短期間でのサイト構築・公開が実現したと考える. 一方で,2014年に入り国内CMSサイトへの不正アクセスが急増していることなどの理由で,大手レンタルサーバ業者などによるセキュリティ強化策が図られている.具体的には管理画面へアクセス可能なコンピュータの強制的な制限措置などである.今回の試行サイトは大学構内の筆者らが維持管理するPCでの実験であったため,管理画面にアクセス可能なコンピュータを制限する措置を行わずに運用しているが,今後セキュリティポリシーを強化する必要があると予測される.一方で,このような制限は特に共同運用を想定するサービスでは利便性を損なう恐れもあるため,本格的な運用時にはより実効性の高い運用方法を確立する必要があるものと推測する. また,現状のLinkDataでは,登録されたデータへのタグ付けは市区町村のみに限られており,都道府県がオープンデータを公開したとしても都道府県タグを付与することはできない.LinkDataにおける都道府県タグの付与機能については現段階で検討中であるが,都道府県タグを利用可能にした際のCityDataにおける評価指標アルゴリズムについても見直しが必要になることが指摘されている.
Update: Jul 6, 2014 (遠藤守)
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図4.オープンデータ推進宣言アイコン
Update: Jul 6, 2014 (遠藤守)
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【おわりに】 本稿では,都道府県においてオープンデータ推進を最小限のコストで行うための方策について検討した.都道府県のオープンデータ推進における役割の明確化を検討するなかで,市町村におけるオープンデータ推進の手法との類似および相違点に着目し提案を行った.またこれらの提案に基づき,実際にカタログサイト試行版の構築を実施した.この結果,試行サイト運用における注意点やオープンデータプラットフォーム活用の利点などいくつかの点で有意義な知見が得られた.今後は本試行サイトを更に発展させ,本格運用に向けた試行を行ってゆく予定である.
Update: Jul 6, 2014 (遠藤守)
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【謝辞】 本研究の遂行および執筆にあたり多大なるご協力頂きました須坂市政策推進課の皆様,信越総合通信局地域オープンデータ推進会議の皆様,およびSNS上で貴重なコメントを頂きました全ての皆様に感謝の意を表します.なお,本研究の一部はJSPS科研費(課題番号:25280131)による.
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【参考文献】 [1] 福安真奈, 浦正広, 山田雅之, 遠藤守, 宮崎慎也, 安田孝美(2013):観光情報の公開API化による地域PRモデルとその課題, 社会情報学会, 2013年社会情報学会(SSI)大会研究発表論文集, pp.199-202. [2] 小池優希, 福安真奈, 浦田真由, 遠藤守, 中貴俊, 山田雅之, 宮崎慎也, 安田孝美(2014):オープンデータ推進のための地域情報化の取り組みと今後の展望, 社会情報学会中部支部研究会, SSICJ2014-1, pp.33-36. [3] OKFN (Open Knowledge Foundation) : http://okfn.org/ (2014.7.5閲覧) [4] 5374.jp : http://5374.jp/ (2014.7.5閲覧) [5] 税金はどこへいった? : http://spending.jp/ (2014.7.5閲覧) [6] LinkData : http://linkdata.org/ (2014.7.5閲覧) [7] CityData : http://citydata.jp/ (2014.7.5閲覧)
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Update: Jun 5, 2014 (遠藤守)
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Media & Design Group

Create:Jun 17, 2014, Update:Mar 29, 2017
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Update: Jun 17, 2014 (遠藤守)
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須坂市の情報化を考える会

Create:Jun 17, 2014, Update:Dec 20, 2014
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