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経営比較分析表データセット作成プロジェクト

License : CC0
 本データセットは、これまでにxlsxまたはpdfにより公表された『経営比較分析表』の個票を収集・解析することで、経営指標とテキストデータを一覧化したものです。病院事業の『経営比較分析表』は総務省通達により平成28年度から公表されている書式です。(平成27年11月30日付け総財公第130号、総財営第91号、総財準第122号、総務省自治財務局公営企業課長、同公営企業経営室長、同準公営企業室長)この書式には4つの分析欄が含まれることに特徴があるといえます。分析欄とは「地域において担っている役割」「経営の健全性・効率性について」「老朽化の状況について」「全体総括」からなるテキストデータです。
Update: Oct 17, 2020

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 下の図は本データセットのうち「地域において担っている役割」のテキストデータを利用して、共起ネットワーク図を示したものです。この分析欄では、主に地方部の中核病院がその医療上の役割を記述していることがわかります(Subgraph: 02)。特に、地域に唯一の医療機関では、急性期、慢性期、回復期、周産期といった医療体制の維持を中心的な役割にあげています。そのうち、周産期医療は小児期医療とともに維持すべき医療として、災害拠点としての役割に近いものとして捉えられています。これは、周産期、小児期、救急医療が不採算分野であることによります(Subgraph: 01)。感染症対策はこうした不採算分野や災害対策とともに維持すべき政策医療と考えられています。また、政策医療に言及している病院は、僻地医療の中心となっている一方で、研修医の受け入れによる人材育成を担っています(Subgraph: 04)。その一方で、在宅支援や訪問看護といった高齢化に対応した医療も求められています(Subgraph: 05)。その中でも、地域包括ケアシステムは最も中心的な語として知られています(Subgraph: 03)。
Update: Oct 17, 2020 (hideki_shibutani)
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 また、本データセットを用いて「地域において担っている役割」と都道府県との対応分析をあらわすことができます。ここでは、むしろ都市部に位置する公立病院が「感染症」に言及していることがわかります。東京都、兵庫県、神奈川県はその代表的な地域です。また、こうした地域には救命医療を重点におく傾向があります。大阪府・埼玉県は周産期・小児期医療にも言及する傾向があることがわかります(図左)。  鹿児島県、沖縄県、和歌山県などは病院群輪番制に言及することが多くなっています(図上)。  高知県、秋田県、宮崎県、山口県にある病院は過疎地域に言及する傾向にあります。こうした地域では採算の問題も大きいほか、不足している医師・看護師・医療スタッフの確保にも困難があります(図右上)。それとは異なり、青森県、山形県、岡山県などは、高齢化に対応した予防医療や慢性期医療へのニーズが大きいことがうかがえます(図右)。  以上の都道府県から離れた回答として、岩手県は医師の人材育成への貢献が大きいと捉えています(図下)。ただし、研修医の受け入れについては医師不足の顕著な過疎地域では共通して積極的な態度をとっています。
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 下の図は「老朽化について」として記載されている語の共起ネットワーク図を示したものです。ここでは、器械備品減価償却率と有形固定資産減価償却率の2つの指標を中心として分析を行っています(Subgraph: 02, 04)。それによると、公立病院での設備投資においては電子カルテの導入と空調設備について多く言及していることがわかります。特に、多くの病院が電子カルテは高額医療機器の典型例であると捉えています(Subgraph: 01)。病院の建物に対しては、鉄骨鉄筋又は鉄筋コンクリート造の法定耐用年数39年を経過すると改築を必要とするほか、法定耐用年数の半分20年を経過すると修繕を要すると考えています(Subgraph: 03)。
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 次の図は「経営の健全性・効率性について」として記載されている語の共起ネットワーク図を示したものです。ここでは、医業収支比率と経常収支比率を中心的な指標としていることがわかります(Subraph: 02)。特に、医業収支比率は医業収益に結びつくことから、各病院はより重要な指標と捉えています。医業収益に強く結びつく要因には診療単価・入院単価があります。これは、診療報酬改定の際に重症度認定や看護基準の引き上げに直面して、結果としてマイナス改定となることで単価に悪影響を受けることがあります。また、マイナス改定の影響は患者1人1日あたり収益の低下という形にもあらわれます。その一方で、収益を確保するための効率化が医師、看護師といった医療スタッフの確保と背反することが多くなっています(Subgraph: 01)。  単価については、高額な薬品の使用による影響が大きくなっています。これは、病院が高額な抗がん剤を使用するといった高度な医療を提供することで、単価を上昇することができるからです。その一方で、高額な薬品を使用することは材料費の高騰につながるため、後発医薬品(ジェネリック)の使用を促進することも目指しています(Subgraph: 05)。  経常収支比率は累積欠損金比率に結びついています。累積欠損金比率については、平成26年度に医療法人会計基準が改正されたために、それまで引き当てられていなかった退職給付引当金を計上したことが大きな影響を及ぼしています。このため、累積欠損金が大幅に増加し比率も悪化しています。公立病院全体では、令和元年度の累積欠損金が1兆9千億円を超え、過去最高の水準を更新し続けています(Subgraph: 03)。
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 最後に、下の図は「全体総括」として記載されている語の共起ネットワーク図を示したものです。この図において最も中心的な語は「収益」「医療」そして「確保」です。特に、公立病院は医師・看護師・その他の医療スタッフを確保することを、重要な課題として掲げていることが多くなっています(Subgraph: 01, 02)。また、「患者」については地域の人口減少と少子高齢化の影響を受けています。ただし、近い将来では団塊の世代が後期高齢者となることで、病院によっては医療需要が高まることを見込んでいます(Subgraph: 03)。
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 現下の新型コロナウイルス感染症では、感染症病床をもつ公立病院が感染症対策に大きな役割を果たしています。こうした感染症病床をもつ公立病院がどのような経営実態にあるかについては、本データセットを学習データとして用いることで明らかにすることができます。ここでは、平成30年度経営比較分析表を対象としてロジスティック回帰モデルを利用します。
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Update: Oct 17, 2020 (hideki_shibutani)
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> table(res$'感染症病床あり', predict(model, type="response") > 0.5) FALSE TRUE FALSE 1369 88 TRUE 208 308 > DescTools::PseudoR2(model) McFadden 0.3909515 > summary(model) Call: glm(formula = "感染症病床あり~.", family = binomial(link = "logit"), data = res) Deviance Residuals: Min 1Q Median 3Q Max -2.4261 -0.5110 -0.3026 0.1483 2.7020 Coefficients: Estimate Std. Error z value Pr(>|z|) (Intercept) -2.7179268 0.6108956 -4.449 8.62e-06 *** `「感染症」`TRUE 3.2725807 0.3918867 8.351 < 2e-16 *** `「災害」`TRUE 1.2214461 0.1444995 8.453 < 2e-16 *** 医業収支比率 0.0357892 0.0080102 4.468 7.90e-06 *** 病床利用率 -0.0374583 0.0067892 -5.517 3.44e-08 *** 有形固定資産減価償却率 -0.0276250 0.0043132 -6.405 1.51e-10 *** 病床100床あたり医師 -0.0793090 0.0167093 -4.746 2.07e-06 *** 病床100床あたり看護部門 0.0165883 0.0052390 3.166 0.00154 ** 職員数 0.0028548 0.0002346 12.168 < 2e-16 *** --- Signif. codes: 0 ‘***’ 0.001 ‘**’ 0.01 ‘*’ 0.05 ‘.’ 0.1 ‘ ’ 1 (Dispersion parameter for binomial family taken to be 1) Null deviance: 2267.6 on 1972 degrees of freedom Residual deviance: 1381.1 on 1964 degrees of freedom AIC: 1399.1 Number of Fisher Scoring iterations: 5
Update: Oct 17, 2020 (hideki_shibutani)
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 ロジスティック回帰分析の結果によれば、感染症病床をもつ病院は医業収支比率が高く、比較的に経営上の余裕があったことがうかがえます。また、病床利用率は規模のわりには低い傾向にあります。これは医療崩壊を回避するのに有利に働いたと考えられます。さらに、有形固定資産減価償却率が低く、比較的に設備が更新されていたこともわかります。  病床100床あたり看護師については充実している一方で、病床100床あたり医師については不足しています。そのため、医師人材に大きな変動を生じると、大きな影響を及ぼす危険があります。
Update: Oct 17, 2020 (hideki_shibutani)

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