【エントリー作品の詳細説明】
小倉百人一首LODは、全国各地の図書館でCC0、CCBY、CCBY-SA相当のオープンなライセンスを付与して公開され始めた古典籍の画像データをリンクした作品である。昨年度のLODチャレンジ2017では、かるたゲームのためのデータを整理するとともに、各地の図書館に所蔵している古典籍の画像にリンクを形成し、バラバラに公開されているオープンデータ画像をつなぐ取り組みを行った。LODチャレンジ2018では、IIIF(International Image Interoperability Framework)を使って、古典籍画像のリンクの改善を試みる。
IIIFとは、画像へのアクセスを標準化し相互運用性を確保する技術として、近年、国際的に普及しつつある。日本においても、この1年で急速に普及し、デジタルアーカイブに適用される事例が増加している。小倉百人一首の画像を提供しているデジタルアーカイブでは、国文学研究資料館新日本古典籍総合データベースが対応しているほか、2018年5月15日には国立国会図書館の画像がIIIF対応した。
昨年度に作成した小倉百人一首LODでは、1枚の画像に複数のかるたが含まれていた場合には画像全体にしかリンクができなかったが、IIIF ImageAPIを使えば、当該のかるた部分のみを切り出した画像リクエストURIにリンクをすることができるようになる。作成済みのデータセットにIIIF対応したファイルを追加するとともに、新規でもIIIF対応のデータを作成した。また、IIIFのPresentation APIを使えば、別々の所蔵館から公開されている画像を、IIIF対応のビューワーを用いて、並べて表示することができる。書誌のデータに、IIIF Manifest URIの要素を追加し、IIIF技術を使った画像の比較表示がしやすくなるようにデータセットの改善を行った。
※IIIFに関する参考情報
日本の図書館等におけるIIIF対応デジタルアーカイブ一覧(https://matome.naver.jp/odai/2152584366126558001)
IIIF Discovery in Japan(http://iiif2.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/s/iiif/page/home)
IIIF公式ウェブサイト(https://iiif.io/)
[改善したデータの詳細]
小倉百人一首LODのうち、国立国会図書館と国文学研究資料館がIIIF対応している。
※ 国立国会図書館デジタルコレクション(http://dl.ndl.go.jp/)
※ 国文学研究資料館 新日本古典籍総合データベース(https://kotenseki.nijl.ac.jp/)
小倉百人一首LODのIIIF対応として、下記の2点を改善したデータを作成した。
(1)見開きに複数のかるたがあった画像について、IIIF ImageAPIを使って、当該のかるた部分のみを切り出した画像リクエストURIにリンクをした。
(2)小倉百人一首オープンデータ画像リストのファイルにもIIIFのmanifestURIを追加した。同じ版本のデータを作成し、IIIF対応のビューワーで並べて表示できるようにした。
【新規作成データ】
・小倉百人一首/菱川師宣画(国文学研究資料館所蔵) http://linkdata.org/work/rdf1s7295i
※IIIFの画像APIにより、当該かるた部分のみにリンクした。
【修正作成データ】
・小倉百人一首/菱川師宣画(国立国会図書館所蔵) http://linkdata.org/work/rdf1s6837i
※IIIFの画像APIにより、当該かるた部分へのリンクに修正した。
schema:imageを修正したデータのファイル名は ndl_hishikawa_iiif
・小倉山荘色紙形和歌(国立国会図書館所蔵) http://linkdata.org/work/rdf1s6839i
※IIIFの画像APIにより、当該かるた部分へのリンクに修正した。
karuta:imageOfYomi, karuta:imageOfToriを作成したデータのファイル名は ndl_shikishi_iiif
・小倉百人一首(国文学研究資料館所蔵) http://linkdata.org/work/rdf1s6856i
※IIIFの画像APIにより、当該かるた部分へのリンクに修正した。
schema:imageを修正したデータのファイル名は nijl_izumiya_iiif
・小倉百人一首オープンデータ画像リスト http://linkdata.org/work/rdf1s6836i
※IIIF対応の画像を公開している資料については、manifest URIを追加した。
なお、語彙については、下記のとおりの修正を行っている。
(1)各機関で所蔵している小倉百人一首のschema:image(画像のURL)または、karuta:imageOfYomi(読札の画像),karuta:imageOfTori(取札の画像)に、IIIF Image APIを利用できる場合は当該かるた部分への画像リクエストURIを記入することにした。
(2)小倉百人一首のオープンデータ画像リストにrdfs:seeAlso (IIIFマニュフェスト)を追加した。IIIF Presentation APIのマニフェストのURIを記入している。
(3)あわせて、小倉百人一首のオープンデータ画像リストにowl:sameAsを加え、所蔵者が提供している書誌データへのリンクも記入できるようにした。
※小倉百人一首LODの語彙の全体像は、http://karutalod.web.fc2.com/ogura.html を参照してください。
[独自性]
小倉百人一首は、遊びとしての知名度・人気があり、かつ和歌研究にも膨大な資料的な蓄積がある素材であったため、LODによるデータ活用例は一定のインパクトをもって受けとめられた。昨年度の小倉百人一首LODの価値を高めるために、今年度はIIIFという画像処理技術を活用することに取り組んだ。文化情報資源のオープンデータと新しいIIIF技術普及のための活用事例となる取り組みである。各地の図書館での画像がIIIF対応で公開されるケースが増えてきた。IIIFの対応により、より便利にデータの活用ができることを示すための一つのモデルとなっている。
[IIIFの活用]
IIIFは近年、デジタルアーカイブの画像公開技術として、国際的に普及しつつある。日本においてもこの1年で急速にIIIF対応のデジタルアーカイブが増加したが、それらを活用した取り組みは未だ多くない。わかりやすい活用の事例を示すことで、画像を公開している図書館のIIIF対応がさらに増加することが期待できる。
(1)画像の切り取り
古典籍の画像から、かるたの札を切り出すことができるので、ゲームアプリケーションの開発者が古典籍画像を利用しやすくなる。
(2)版本の比較研究
画像リストにIIIFManifestURIを追加し、古典籍画像の版本の比較が容易になる。
今後、オープンデータの古典籍画像の翻刻を進めるとともに、IIIF対応した画像の情報を順次追加していく。できるだけ数多く収集すれば研究用途としての価値が出てくることを期待している。
Update: Sep 26, 2018
(Nanako Takahashi)